(「Men's Brand '03年7月号」より抜粋)
Q1. 帆布っていつ頃日本に入ってきた?
A1. 『や、それは僕の祖父さんの頃の話だから実はよく知らない…(笑)。でも明治の半ばには日本でも作るようになったんじゃないかな。ウチは大正元年創業だし。最初は人力車の幌だとか、車夫の雨合羽を作っていたね…』
Q2. 帆布素材って結局、どんな素材の事を言う?
A2. 『うーん、それも厳密なことは知りません(笑)。ただ、綿や麻などの自然素材を「平織り」にした、厚手の丈夫な生地のことを総称して「帆布」(はんぷ)と呼んでいますね。「綿帆布」(めんはんぷ)とか。一般的な「綾織り」の綿生地は帆布とは言わないね。織りの違いですよ。』
Q3. 平織りと綾織りの違いは?
A3. 『平織りは縦糸と横糸を十字に、交互に織り込んでいく技法のことです。綾織りは縦糸を横糸に対して1本おきに織り込んでいく。平織りのほうが目が詰まって解れ難く丈夫なんだけど効率が悪い。現代では平織りの織機は少なくなっているんですよ。』
Q4. 帆布には何種類ぐらいある?
A4. 『帆布は生地の厚さによって号数が決まっている。1号から11号まであります。普通使われるのは4号くらいからだね。数が少ないほうが厚手の生地になる。厚いほうが強いけど、その分防水面でちょっと弱くなる。』
Q5. 帆布の厚みってどうやって決まる?
A5. 『平織りにした際の糸の太さで決まります。この糸っていうのは綿糸(綿帆布の場合)をより込んで作っているんだ。
例えばウチで使っている9号帆布は…えーと横は3本、縦は2本の綿糸を使っている。9号帆布は横3本縦2本でできた糸ってわけ。糸1本に使われる綿糸の数が多ければ太く(⇒厚く)、少なければ細い(⇒薄い)。細ければ織った時に目が詰まるから、防水性も高くなる。』
Q6. 日本の帆布の生産地はどこが有名?
A6. 『やっぱり岡山とかは織物の産地だけど…。国内で帆布を作っているところは少なくなったよね。』
Q7. 帆布の色ってどうやって付けるの?
A7. 『織物だから、(伝統的な)染め技法で付けるけどね。帆布は色がつき難いんだよ。それが味わいでもあるんだけど。』
Q8. 化学繊維に比べて勝っている点は?
A8. 『ナイロンとかに比べると素材自体の引き裂き強度が強い。ナイロンは少しでも強度を増すために綾織りにするんだけど…。とにかく丈夫なのは帆布の一番の良さだね。あと、天然素材だから燃えにくくもある。』
Q9. 帆布素材は防水性が心配なのですが・・・
A9. 『いや、帆布は布自体に防水効果がありますよ。綿糸が水を含むと膨らんで目が詰まるんですよ。だからそれ以上水が染み込まない。さらにパラフィン加工といって、糸そのものに蝋を染み込ませた防水加工をする。その加工は染み込ませるから数十年は持ちます。化学繊維の場合は裏地に防水コーティングをするだけだから、そのうち剥げちゃう。』
Q10. 帆布の手入れ方法を教えてください。
A10. 『汚れは水に漬けてブラシで擦って落としてください。そのあと陰干しすれば大丈夫。洗剤は使わないように。丈夫だし、何十年も修理しながら使い続けられる良い素材ですよ。帆布は。』